2009年8月20日(木)、ロビンは百塔の街「プラハ」にいた。
気温は30度を超えているが、日本と違い湿気が少ないので日陰にいれば爽やかだ。


しばしアンバサダーホテル(ヴァーツラフ広場)の前でワイヤレス電波を無料で拝借してネットをした後、18時の仕掛け時計を見ようと時計塔へ向かっていた。
ヴァーツラフ広場に警察や機動隊の車両が続々と集結してきたので気にはなっていたが、まさかあんな場面に遭遇するとは・・・。
時計塔へしばら歩くと、前方から大きな声が聞こえてきた。
そして、ロビンの進行方向と逆向きに逃げ出す人々がいるではないか!
いったいこの先で何がおきているのだ!?
期待と不安に胸を膨らませて、逆走してくる人々を掻き分けながら先へ急ぐロビン。
答えはすぐに明らかとなった。

何と!?前方から、古都プラハに似つかわしくない集団が現れたのだ。
発炎筒を燃やし、大きな旗を振り、大きな声で叫びながらこっちに行進してくる100名近い集団が!!
プラハの旧市街の道は狭い。
その道の両端には、カフェやレストランのテーブルが出ている。
そんなものお構いなしになぎ倒しながら、その集団は行進を続ける。
それはまるで、全てを押し流す鉄砲水か土石流のようだ。
そりゃ、みんな逃げるわな。

ロビンも後退しながら最前列でシャッターをきる。
遅れてやってきた機動隊が、この集団の前後を塞ぐ。

5分ほどの押し問答の直後、機動隊が一斉に攻撃を始めた。

「ワァー!!キャー!!うぉー!!○△■※!!」
警棒で叩く、倒れた奴を殴る蹴る、ブン投げる・・・。
集団も負けじと応戦し、瞬く間に凶暴な暴徒と化す。
拳(こぶし)大の石、イス、ビール瓶が飛び交う。
あたりは一瞬にして修羅場へと変わる。

続々と到着し増員される機動隊。

ロビンは店の入り口に隠れて、飛び交う石や近くで割れたビール瓶の破片に気をつけながら写真を撮る。
必死に抵抗を続けた暴徒達であったが、さしもの完全武装の機動隊には勝てるわけがない。
瞬く間に鎮圧され、一瞬の静寂が辺りを包む。
まっ、こんなもんだ。さっ、時計塔へ行こうか。そう思った時だった。
暴徒VS機動隊、第二ラウンドのゴングが鳴った。

暴徒達は、すぐ脇にあるレストランへ逃げ込んだのだ。
それを取り囲む機動隊。
店内からあらゆる物を投げて応戦する暴徒。
どうやって鎮圧するのか、事の成り行きを見物する野次馬ロビン。

「パッン!!パッン!!パッン!!パッン!!」
辺りに響き渡る大きな炸裂音。
地面へ伏せる見物人もいる。
機動隊は何と発砲したのだ!!
ロビンも壁に隠れながらブルブル・・・((((;゚Д゚)))ガクガクブルブル。
しかし、この音は尋常ではない大きさだ。
大きな音と光で、暴徒を鎮圧するための特殊武器なのだろう。

圧倒的な武力の前に屈した暴徒。
全員が後ろ手に縛られ、地面に横になって並ばされる。
こうして、再びプラハの街には平和が訪れた。
この暴徒達は何なのかと言うと、セルビア人です。
今日の18:00から、プラハの郊外でチェコVSセルビアのサッカーの試合があるのです。
きっとスタジアムに入れなかったサポーター達が暴れたのでしょう。
翌日ロビンは、暴徒達が逃げ込んだレストランを見に行ってみた。

なんとそのレストランは、昨日の出来事が白昼夢であったかのように、いつもと変わらない様子で営業していたのであった。